プロレスの入場テーマ曲を選んでいるのは誰なのか?前回お話した通り、昭和の時代に関して言えば、テレビ局のスタッフです。テレビを観ていると、BGMや効果音が流れますよね。テレビ業界ではああいう音をまとめて「音響効果」と言って、選曲する専門の人がいるのです。かつてはプロレスのテーマ曲も同じように彼らの仕事でした。

さて、新日本プロレスで活躍した外国人レスラーのひとりにスタン・ハンセンがいます。1977年からアントニオ猪木さんとは名勝負を繰り広げますが、突如としてライバル団体の全日本プロレスに移籍して話題になりました。

ここで面白いのが、移籍をきっかけにハンセンの入場テーマ曲が変わったことです。それまでのハンセンはテレビ朝日のスタッフが選んだ「ウエスタン・ラリアート」という曲で入場していましたが、全日本プロレスを中継していたテレビ局の音響効果は、新しいハンセン像を作ろうと、曲を変えてしまいました。つまり、テーマ曲を変えることで、選手のイメチェンを図ったのです。

新しく用意された曲が、スペクトラムの「SUNRISE」です。スペクトラムは活動期間が2年しかなかったのですが、派手な衣装と金管楽器を使ったサウンドでヒットを飛ばした日本のバンドです。結果的に「SUNRISE」はハンセンの入場のイメージとぴったりで、現役を引退するまで18年間も使われ続けました(1990年に新日本プロレスにスポット参戦したときも、そのまま使用)。

スペクトラムのボーカルは西慎司さん。実はハンセンが入場するときには、ボーカル部分がカットされたバージョンが使用されていましたが、今回の「シンニチイズムミュージックフェス」では西さんが歌ってくださることになりました。ボーカルの入った本来のバージョンを聞いたことのないプロレスファンにも是非聞いてもらいたいです。


そして、もうひとつ声を大にして強調したいのが、新日本プロレスで使われたテーマ曲「ウエスタン・ラリアート」も名曲だということ。忘れられてしまうにはもったいない。むしろ、ライブ当日も聞きたいと願うのは私だけでしょうか?せっかくの新日本プロレス50周年ですし、NJPWスペシャル・バンドのみなさん、もし間に合うようでしたらそっちも宜しくお願いいたします。