以前、テレビの音響効果の人に聞いた話ですが、テーマ曲黎明期の1970年代後半頃には、視聴者から「この曲、よかったら〇〇選手の入場に使ってください」というハガキが、番組宛に届くこともあったそうです。音楽とプロレス両方が好きな人なら、気持ちわかりますよね。このコラムの読者の中には「レスラーの入場テーマ曲を選んでみたい!」という人もいるんじゃないでしょうか。
僕の知る限り、番組の中で視聴者に向けてテーマ曲を募集したのは天龍源一郎さんのテーマ曲だけです。1982年当時の天龍さんにはまだテーマ曲がなく、これから売り出していく期待の選手という意図での募集だったと思います。
その結果、決定したのが、高中正義さんの「THUNDERSTORM」でした。
天龍さんが最初に入場で使ったのは1982年。そこから(短期間は別の曲はあったものの)2015年に引退するまで33年もこの曲を使い続けたので、今ではすっかりプロレスファンの間では「天龍の曲」として認知されています。
前に武藤敬司選手が頻繁にテーマ曲を変えてイメチェンを図ったとご紹介しましたが、その正反対に位置するのが天龍さんでしょう。「曲を変えない男」と「曲を頻繁に変える男」との対決は、1999年に新日本プロレスのリングで実現。名勝負になりましたよね。
さて、高中さんはプロキャリア50年を超える大ベテランで、ギター演奏だけで多くのお客さんを魅了できる数少ないギタリストです。最初は高中さんも自身の曲が天龍さんの入場に使われたことは知らなかったのですが、長く使い続けたことに感謝して、引退試合に駆けつけて、試合開始前のリング上で生演奏を披露しました。僕も会場にいましたので、ちょっとアレンジされた「THUNDERSTORM」を聴いて胸が熱くなったことをよく憶えています。
今度の「シンイチイズムミュージックフェス」で高中さんは、久々にプロレスファンの前で生演奏を披露してくださることになりました。天龍さんが引退してから7年、今聴くとちょっと違った気持ちになりそうで、楽しみでなりません。
