プロレスの入場テーマ曲は、どんなジャンルでもかまいませんが、昭和の時代に唯一敬遠されていたのが「歌もの」です。理由は、実況が聞き取りづらくなってしまうから。テレビの音響効果のスタッフが曲を編集したのは、そのためです。
しかし、そんな風潮も平成に入る頃から少しずつ変わってきました。その代表が鈴木みのる選手の入場に使われている「風になれ」ではないでしょうか。歌っているのは「翼の折れたエンジェル」などのヒットを持つシンガー、中村あゆみさんです。
元々、鈴木選手が高校生の頃から中村あゆみさんの大ファンだったそうで、「いつか中村あゆみの曲で入場したい」という思いが現実になりました。鈴木選手がパンクラスという団体で頭角を現した1995年、中村さんに依頼して作ってもらったオリジナルソングで、タイトルはもちろん、歌詞やメロディはすべて鈴木選手をイメージして作られています。
特に印象的なのが「かぜになれ〜!」というサビの部分で、鈴木選手は入場の度にこの瞬間にロープをまたいでリングインします。お客さんもタイミングを知っていて、今では会場で「風になれ〜!」の大合唱が巻き起こるのが恒例になりました。選手がテーマ曲に合わせて動く珍しいケースです。
鈴木選手が海外でも頻繁に試合をしている影響で、「風になれ」は世界中のプロレスファンに認知されています。海外のファンも「恒例」を知っていて、鈴木選手がリングインするタイミングに合わせて日本語で「KAZENINARE!」という大合唱も発生。会場に一体感を生む入場テーマ曲としてはナンバーワンかもしれません。鈴木選手の行く先々で「風になれ」がダウンロードチャートを上昇するという話もあるくらいです。
さて、実は中村さんは2013年、新日本プロレスの東京ドーム大会に登場して鈴木選手の入場に合わせて歌ったことがあります。あの巨大空間にファンの大合唱が響いたことは言うまでもありません。
今回の「シンニチイズムミュージック」ではコロナの影響で大合唱は難しいかもしれませんが、「世界一この曲を最も輝かせることができる男」である鈴木みのる選手がこの曲の魅力をどうやって引き出してくれるのかとても楽しみにしています。
